昼下がりの高速道路を西へ向かう。今日の行き先は瀬戸内海に浮かぶ広島県の離島、大久野島だ。
いつものようにFMトランスミッターで繋げたiPodの曲を流しながら、中国自動車道から山陽自動車道と数時間ひたすら走り、広島県に入って下道へ。ここから海沿いの道を走る。
さい「この先海沿いを走るんやけど、そこの景色めっちゃ好きやねん!」
穏やかな波、近くに見える芸予諸島の島々。瀬戸内海だ。
なお、得意げに話してしまったのはこの旅の2年前、大阪から門司港まで自転車で山陽地方横断の旅をしていたからである。一人で孤独に走った見知らぬ道を、旅好きの友人達とトレースする気持ちよさよ!
海沿いの道をさらに進むと、コンテナ船やタンカーを建造する幸陽船渠(※1) の巨大なクレーンが顔を覗かせる。造船が盛んな瀬戸内海沿岸ならではである。
巨大建造物のすぐ近くに一軒家がある光景は、日常と非日常の混在に見える。でも、ここに住んでいる人にとってはこれこそ日常なわけで、普通とは何かと考えさせられる。観光地のきれいな景色も良いけど、旅先で不意に出会う非日常な光景も心惹かれるものがある。
クレーンに興奮している僕を横目に、コカ・コーラ収集家の鷹輔氏は年季の入った自販機の方へ駆け寄って行った。
自販機は動かなかった。いつからあるのだろうか。風化具合から見るとかなりの年代物(1960年代?)に思えた。
しかし稼働停止後もこうやって駆け寄ってくれる人が現れるとは、自販機を設置した人も想像しなかっただろう。今もまだあるのかな。
ほぼ地元の人しかいない忠海港に到着。大久野島は忠海港の沖合い約3km地点にある。なお、島内は車の走行が禁止されているので車はここまで。港のガラガラな駐車場に車を停めて、きっぷ売り場で往復乗船券を購入する。
ここでちょっとしたハプニングが発生した。
海面に浮かんだ白い紙。今そこで買ったばかりの鷹輔氏のきっぷが強風で海に飛ばされたのだ。
見事に手が届かないところに落ちちゃったので取れない。無情にもよく見えるけど。どうしよう。また買わないとだめなのか。それとも海に飛び込むか。
「何しよるん?」
困り果てている廃墟部の元に、港のおっちゃんが近づいてきた。
状況をすぐに把握した港のおっちゃん。手慣れた手つきで漁業用と思われる網(めちゃめちゃ長い)を持ち出し、きっぷをすくい取ってくれた。
「はい」
ご迷惑おかけしてすみません。ありがとうございます!
おっちゃん優しすぎか。今気づいたけど乗務員さんっぽいですね。本当にありがとうございました。
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